アイドルは別腹

あと少しだけ、を繰り返して

ちょっといいなと思っていた男の子の話

 

荒井由実の『ひこうき雲』が、頭からはなれない。

 

 

 

名前を知ったのはもうずっと前。

顔と名前が一致したのは、少し前。

それでも完全に一致したのは、最近。

 

前髪をあげて、ダンボカチューシャをしていた。

彼らのお家にきたお友達のキャラクターにかけたのかな。

シルエットだけなら完全な聖☆おにいさんブッダだった。

べつにかわいいとかじゃなくて妙に似合っていた。気になって仕方なかった。

 

その姿で、他の2人が君と夏フェスを踊るのを見ながら、驚く本家の後ろでにやにやしてて。

だけどあの難しい振り付けをドッキリのために覚えて、本家の前で披露してる仲間をちょっとドヤ顔で見てるのがかわいかった。

推すならこの子だなーとぼんやり見ていた。

それくらいのことだった。ね。最近でしょ。

 

 

 

そんな彼が亡くなったことを知ったのは、電車のホームだった。

えっ。と本当に声が出た。心には留められなかった。

Twitterのトレンドに、彼の名前とグループ名が並んでいた。嘘じゃないらしかった。

何度見ても嘘じゃなかった。彼のTwitterはメンバーのかわいい寝顔と共に新年の挨拶がされた投稿で終わっていた。そこで止まっていた。リプライ欄の数字だけが、ずっと動いていた。

 

 

 

22歳だと知って、愕然とした。

年齢も知らねーのかと思われるくらい、浅い浅いファンだけど、とにかくショックだった。

だってわたしはこれから知っていくつもりだったんだ。

これまでの、追いつくには多すぎるたくさんと、それ以上の、追いつかないくらいに増えていくこれからのことを。

 

 

わたしの大好きな人たちが、ぽつりぽつりと公式の引用RTでお悔やみの言葉を述べていった。

超弩級の不謹慎ドッキリであってくれと思っていたのに。

ここまでくるともう、まぎれもなく、本当のことだと実感するしかなかった。

 

 

残りのメンバーは、そして誰よりこの旅行を楽しみにしていたであろうあの子は、大丈夫だろうか。

気丈になんて振る舞わなくていいから、どうか。どうか。

いや、もう言葉が見つからないな。

 

 

昨日の夜、晩ご飯を遅いスピードで食べながら

わたしが21,2歳のころのことを考えていた。

そしてその何億倍も輝く彼の、彼らの今を思った。

楽しいことがたくさん待っていたはずだった。

やりたいことがまだまだあっただろう。

会いたい人がたくさんいただろう。

悔しい。どうしてなんだろう。あまりに早すぎる。

 

 

もともと1月4日は、あまり好きじゃない。

大好きな従兄弟たちが静岡に帰るのも毎年4日だったし、

あの悪夢のような2014あけおめコンも、

大好きだった、おばあちゃんちの犬が虹の橋を渡ったのもその日だった。

幼い頃からいい思い出がない。ほんとに。

 

 

配分間違えて全然美味しくないお味噌汁と

適当なほうれん草の炒め物とれんこんもちを胃に流し込んで

そう言えば彼はなにが好きだったんだろう、と考えていた。

なにも知らなかった。知ってくつもりじゃなくて知っとけばよかった。こんな小さなことでも思ってしまう。

 

 

生きてさえいてくれれば、なんて言葉の真髄をこんな形で知りたくなかった。

有名なお笑い芸人の、生きてるだけで丸儲け、という言葉の重みを感じていた。

でもこの重みをこんな、こんな若い子に想うのはやっぱりつらい。

遺したものはたくさんあるけど、この先の5,60年があまりにも長すぎる。それには足りない。足りなすぎる。

 

 

気を紛らわすように熱いお湯のシャワーを浴びたあと、それでもなんだか寝られなくて少しきつめの焼酎を、ジャスミンティーで割って

回らない頭で買った金柑の甘露煮を黙々と食べていた。

ジャスミンハイも、金柑も、好きになったのは彼がなるはずだった年齢になってからだなと思ったあとは、もう口にできなかったけれど。

 

 

 

 

いつのまにか大嫌いな4日は終わり、

日付は1月5日に変わっていた。

わたしは26歳になっていた。